12/1丸の内キャリア塾 メモ書き写し

12月1日、早霧さんの丸の内キャリア塾スペシャルセミナーに参加しました。

安定の竹下さんの司会進行のもと、柔らかにほがらかに冷静に話す早霧さんと夢乃さんを見つめながら、このひとから放たれるすべてから、受け取ることができること、感じること、考えることぜんぶがわたしに影響している/いくことの逃れられなさをあらためて噛み締めた。

タカラジェンヌだったころのふたりを総括するようなお話を、まるで大学の講義のように堂々とメモをとっていられることが新鮮でありがたくてずっと興奮しながら、気づいたらA5のノート6ページ分になっていた。

 

2017年が終わってしまう前に、その汚いメモをとにかくかたちにしておきたくて、久しぶりに書きます。

※雰囲気です。あくまでもわたしのフィルターを通して書き留めた言葉です。

 

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 宙組から雪組への組替について

宙組雪組のハーフです。ちょうどいい案配です。

・組替が一般の会社でいう異動なら、退団は第二の異動というかんじだと辞めたときに思った。

・自分は明るい人見知り。壁に隠れて観察して、この人はいい人そうだ、危害を及ぼす人ではなさそうだ、と判断してちょっとずつ近づいていくタイプなので、雪組のみんなと本当に馴染むのに1年くらいかかった。

宙組がNYなら(のびのびしている)、雪組は京都(真面目できっちりしている)という印象だった。

・組替をきっかけに自分を変えたいというよりは、雪組に早く染まりたい、雪組の歴史のなかに馴染みたいという気持ちが強かった。

・当時はこういう男役になりたいなどの具体的に目標があったというよりは、水さんや彩吹さんなどの上級生についていくことに日々必死だった。

 

トップスター就任後のこと

・トップを目指すのは怖かった。なるための苦労も、トップになってからの苦労も今までみていたからこそ、簡単に目指したいという気持ちにはなれなかった。音月さん、壮さんのもとで二番手をつとめて、早霧せいなを応援している人の存在を強く意識するようになり、自分だけの早霧せいなじゃないという自覚が生まれた。応援の気持ちを裏切らないためにトップをやらせてもらいたいという覚悟を決めた。

・トップになって、今まで見えていなかった仕事の量に驚いた。グッズのデザインや取材だったり。台詞やフリをいつ覚えたらいいんだろうと思うくらいだった。

・組子の面倒をみていた、指導をしていた意識はなかった。勝手にやってくれていた。それができるのも、タカラヅカのシステムゆえ。音楽学校でみんなが同じ教育を受けているから、ひとつの思いで取り組める。変な方向を向いている人がいない。ちょっと方向が違っても、「あそこだよ」って少し示すだけでそこに向かって走ってくれる。

・たとえばそっぽむいている人がいても放っておく。それよりもすでに出発して頑張って走っている人を押してあげたりさらに引っ張ってあげることで、まだこちらに来ていない人が走りたくなる状況になると思っていた。

・ひとりひとりに感想を口にすることはしなかった。自分は演出家じゃなくて仲間だと思っていたから、あらたまって話をすることよりも、日常のなかで「どうしたの」「かわいいね」などちょっと声をかけるなど、コミュニケーションをとるなかで悩みを聞いたりする程度。人の生き方に首をつっこむタイプではないし…みんながそれぞれやるべきことをわかっていることを信じていたから。

・運動会は組がひとつになれるきっかけになった。同じ時や経験を共有することはすごく大切だとあらためて思った。

・ジェネレーションギャップを楽しんでいた。「『5時から男のグロンサン』、わからないだろう」という会話を楽しんでいた。

 

トップコンビのこと

・ふたりの目標として、ふたりで同じ方向を向いて走っていこう、ふたりだけじゃなくて、その景色をお客さまにも見てもらうこと、一緒に舞台に立つ仲間の思いを大切にすることを最初に決めていた。

・長い濃い3年間だった。朝から晩までとにかくずっと一緒なので、家族以上に一緒にいる時間が長いので、遠慮している暇がなくなる。10歳くらい離れているのに喧嘩もしたし、笑いあったり、励ましたったり。どんなときでもコミュニケーションをとることをやめなかった。怒っていても、怒っています、ということを伝え合えていた。あきらめずにコミュニケーションをとり続けて、いいところも悪いところも見せあいながら最後までやり遂げることができた。

・男役をやりたい自分と、娘役をやりたい咲妃をお互いに尊重しあえたことがよかったのだと思う。

 

出演作品のこと

・(トップ期間中の作品がルパンやるろうに剣心など話題作が多かったことについて)いわゆるタカラヅカらしい作品をやりたい自分も大きかったが、ルパンを演ったことで、タカラヅカでアニメを舞台化するなどの挑戦をしてもお客さまに受け止めてもらえる、むしろ応援してもらえることに気づいたし、新しくタカラヅカに初めて出会うきっかけになるという看板としての役割を担えたことが喜びになった。

・動員100%超の記録が続くなかで、プレッシャーを感じていたというよりは、とにかく面白い作品にしたい、その先にお客さまが沢山来て下さると思っていたので、自分と、なにより組子が本当に面白いと思って取り組まないとお客さまにも伝わらないと、舞台に立つなかで常に自問自答していた。

・自分の必死さを組子も見ていたし、組子の頑張る姿に立ち上がれたことも沢山あった。(ひとつにまとまっていたんですね、という竹下さんに対して)客観的にそう言われると嬉しいけれど、(他の組の人も自分たちもそうだと思っているだろうし)まとまっていたと信じたい、というきもち。

・ひとつのものごとにどれだけ真心を込めて、情熱を傾けて取り組めるか、で決まるんだということを、退団をしてから、舞台に立つ以外の仕事を目にするようになってあらためて感じている。

 

(人の)やる気を引き出すには

・やる気スイッチはあくまでも自分で押さないと意味がないと思っている。押してはあげないけれど、誘導することはできるかもしれないけど、押し方は人それぞれだから、どういう距離感でつき合うべきかはよく観察していた。

 

限界を感じること、乗り越え方は

・限界はしょっちゅう感じていた。一から作品をつくることを始める恐怖、不安を毎回感じて、稽古に行きたくない病を発症していた。他の人になんとかしてもらうことはできないから、なんでそういう状況なのかを自分で分析しながらずっと地団駄を踏んでいた。悩んでいることを隠そうとはしていなかったので、組子に相談して、「そんなふうに見えてないですよ」「こうしてみたら」などの言葉で糸口が見つかることも多かった。なにより、組子との他愛もない雑談や笑いが薬になって、少しずつ変わっていく感覚を確かに感じていた。

 

座右の銘

・「こだわらないことがこだわり」

自分で幅を決めたくなかった、自分のこだわりや思い込み無しで、他の方が考える役や作品に挑戦したい気持ちがあった。

 

ここから夢乃さんも登場です。

夢乃さんは自分の退団時に退団に向けてやらなければならないことリストをレポートにまとめて「いつか時が来たら見て!」と早霧さんに渡していた。

・出会いは寮の説明会で、お互い親が不在だったことがきっかけで声をかけあった。

・早霧さんは音楽学校の合格発表の翌日が、すでに合格していた大学の入学式だったので、両親に合格を報告した電話であらためて意思を問われて「行くに決まっとるったい!」と伝えた。

音楽学校時代、アキコカンダさんの授業にて、早霧さんのジャンプ力がすごすぎでみんなとずれていたのが印象に残っている夢乃さんと、夢乃さんの手足が長過ぎて、隣で踊っていると叩かれるのではとびびっていた(雪組のときも。小雨降る路のときでさえも)早霧さん。

夢乃さんは好きなことへののめり込みがすごい。好きだったバレエのクラスは、入学時のDから最終的にAにあがった。AとDの格差はすごい。Aがパドドゥをやっているなか、Dは柔軟と筋トレをしている。

・早霧さんの掃除分担は一番教室で、代々その期の一番美人がやる。夢乃さんは講堂のロビーで、中卒・寮生・身長が170cm以上の男役がやる(大和悠河さんとか)。

・初舞台のとき、成績順で並ぶ楽屋で、ちょうど夢乃さんと早霧さんが隣で、ふたりでひとつの鏡をつかっていた(この話を始めるときの、ち「あーっそうだ!」、と「そうだよ!」のコンタクトが可愛すぎた)。

・組配属後はほとんど会うことがなかったが、それぞれの出演作は観ていた。「Never Say Goodbye」や「竜馬伝!」の新人公演をみて「ちぎちゃんが主役してる!」と感動したり、「長崎しぐれ坂」のさそり役がめちゃくちゃかっこいい!と感激したり、お互い影響しあっていた。

 

夢乃さんが雪組にきて

・と:組替の話を聞いても組替先が「雪組」であることが信じられず、月組かも!と聞き返したらSnowですと言われた。星組で培った自分の持ち物が雪組と違いすぎて驚いた。

夢乃さんは雪組に馴染むのがめちゃくちゃ早かった。(ち「すぐ馴染んでずるい!」)

・早霧さんは24時間役のことを考えているタイプで、すぐに悩んでいたが、「ちょっと息抜きしたら」とか「大丈夫だよ!」と明るく夢乃さんに励まされることで「そうかも!」とマインドコントロールされていた。

・(竹下さん:早霧さんがトップになられて、夢乃さんはそれを支えるように…)

ち:支えるっていう言い方がいやで、支えようと思ってそこにいてほしくない。それぞれがやりたいこと、やるべきことをやるなかで勝手に支えているかたちになるといいなって思っていた。

と:支えようとこれっぽっちも思ってなかった。

ち:私も「支えてよ」って思うタイプじゃなかった。

と:星組柚希礼音さんがトップになったときに、支えようと思わんでいい、自分たちが輝いてくれれば、それが一番支えるということになるから、自分のことに精一杯になってほしい、と言われた経験があって、雪組の組子にもそういう風に伝えていた。

ち:自分はそういう風に言うことも恥ずかしかったから柚希さんみたいにはなれなかったわ。

と:私が言ってたから大丈夫!

ルパン三世で、幕が降りる直前のジャンプは元々の振付けにはなかったが、夢乃さんが「跳んだ方がいいよ!」と推してくれたおかげで採用された。

 

退団してから感じること

・ち:タカラヅカにいて、男役だと名乗っている時点で、他のことを捨てていたことに退団後に気づいた。在団中は気づいていなかったけれど、男役という鎧を脱いだときに、いろんなことを捨てて、そこだけに集中していたんだと思った。大好きで楽しんでやっていたけど、脱いだらすごく楽になった。鎧はけっこう重かった。でも、他を捨てられるほど集中させてもらえたこと、その姿を応援してくれる人がいたこと、そうじゃないとタカラヅカじゃないことに気づけて感謝している。(と「すっきりしてるもん、いま!」)

・と:普通にこんなに楽して生きていけることに感動している。

 ち:ちっちゃいことに感動する、「太陽がまぶしい!暑い!」とか。

・(本名じゃなくて芸名の○○になって、さらに役を演じるという二重三重の世界について)10代のころに音楽学校に入って、知らぬ間にその世界に入って暮らしていくなかで、だんだん芸名の自分が自分になっていく。

・(竹下さん:辞めて、すべてを投げ捨てて…)ち:「らく!」一生懸命やりきったからこそ、今その違いを楽しめている。

 

体力、メンタルのケア

・すごく気を使っていた。神経が研ぎすまされているから風邪もすぐ察知して対処できていた。

夢乃さんはリフレッシュが上手い。落ち込んだら、家に帰ってベランダに出て、しゃがんで(見えちゃうから、夢乃さんがあんなところに、と思われちゃう)月を見ながらビールを飲んでいた。そして10時には寝る。

 

美のケア

・ち:うーーーん。。。辞めてから追求しなければならないことが増えた。男役は無防備でよかった。寝癖を帽子で隠したり。女性として以前に人としての身だしなみに気を使っている(と「もうできてるよ!」)。←このやりとりがまさにすぐに悩むさぎりさんと笑って励ますゆめのさんで、胸がぎゅっとなった。

・食事のタイミングがそれぞれ違う。夢乃さんは公演中は2食、胃もたれしちゃうから劇団では食べない。早霧さんはちょっとずついっぱい食べる。トータル量は一緒のはず。

・ち:こんなに痩せてるけど、なぜか元気でした。両親に感謝。

 

宝塚の舞台を見て

・ち:在団中は下級生でさえいいところを盗もうとか、もっとこうすればとか思いながら観ていたけど、いまは入る前の自分に近く純粋に楽しめている。

・と:ファンのみなさんの気持ちがわかった。宝塚を観る日のためにがんばって、この日が来た!とるんるんして、すてき、恋しちゃった、という気持ちになって、劇場を後にする寂しさを味わっている(ち:その境地にはまだ至っていない)。こんなところ現実にない!

 

「Secret Splendour」に出演して

・どんな経験もやってみないとわからないとあらためて実感した。

・今までのように、よく知っている仲間とではなくても、ひとつの舞台を誰かと作り上げる喜びが確かに存在することを知れた。

・ノースリーブやドレスなどの服装はもちろん、俺じゃなくて私だったりする歌詞の違いを身体で体感できたこと、舞台に立ってお客さまに見せようとしないと挑戦できなかったこと(ち:私生活でドレスなんて絶対着ない と:着ていいんだよー)をありがたく感じた。

・スカートも髪型も、なんでこんなにこだわっているんだろうってファンの人に対して思う。期待に応えようかな、いや応えるまい、と考えながら、とにかく自分のペースでやっていくつもり。

・これから男装することはあるかもしれないけれど、それはけして男役ではない。鎧はもう着れない。

・男の人と舞台に出るのは不思議な感覚。近いし、もたれなくちゃいし、支えられなくちゃけないから。リフトは女性の振付助手の方に対して一度自分がする側をやってみて振付けを理解してから、という稽古をしていた。

・在団中に演じたエラ先生のときも混乱していた。期間限定の男役をやるためにタカラヅカに入ったのに、とイヤイヤやっていたけど(と:かわいそうだった)、退団した今は割り切ってやれているし、エラ先生の経験は無駄じゃなかったなと思う。神様ありがとう。

・エラ先生はほぼソロだったので、振付が後回しにされて最後の一日で4曲くらいの振付けがあってパニックだった。

 

これからの仕事

・(竹下さん:こういうのやってみたいということは?)ち:とくにないし、考えないようにしているし、選びたくないという思いもある。やりたいと思うことが必ずしも叶う訳じゃないことをこれまでの人生で知っているから、ご縁があったものに挑戦したいと思っている。これまでの人生で得られたものをとても幸せに感じているからこそ、なにか社会に還元できることが自分のなかにあるのならば、それに挑戦したい。

 

タカラヅカという存在は

・と:辞めてからタカラヅカの素晴しさをより感じる。入ってよかったなと思う。一生のともだち、ともだちよりも遥か上のつながり、絆を持てた。

・ち:辞めることを「卒業」ということがとてもしっくりしている。タカラヅカは、人生論、舞台のこと、人との信頼関係など、ぜんぶを学べる学び舎、学校だった。卒業してこれからどうなるのかなという不安はあるけれど、その学校がいまもしっかりあるので、誇りをもって生きていきたいと思える。

 

生まれ変わったら

・と:男になってばりばり働きたい

・ち:自分のなかの宝塚での記憶が生々し過ぎるので、その記憶がなくなってたらまた入るかも。笑。

 

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終わり。

咲妃さんとの諦めないコミュニケーションの話と、男役という鎧がとても重かった、と実感をこめて話していたこと、悩みがちな早霧さんと笑って励ます夢乃さんのきっと変わらない関係性にとくに胸を打たれた。

男役という仕事に出会えたことに心から感謝して、その仕事そのものにも、そのなかで築く人との関係にも、ぜんぶに諦めずに臨んでいた早霧さんと、隣にいた夢乃さん咲妃さんの強さ、潔さに、とても憧れる。

少しでも近づけたら、と思う2017年末です。